sony A55を買ってまだ3ヶ月なのに、もう一台デジカメを買ってしまった。先月は、娘にソニーの小さいデジカメをプレゼントしたので、毎月のように買っていることになる。家族には、これを娘にあげればよかったじゃないか、などと不評だが、こんな特殊なカメラは娘には使えないだろうと思って。。。。と苦しい言い訳。
Finepix Real-3Dを買ったのは、もちろん、3D立体写真を撮りたかったから。一昨年くらいから、3Dテレビが取りざたされるようになってきた。電気店の店先で試すと、まあそれなりに効果がある。視聴できる場所や人数に制限はあるが、眼鏡をかけなくても両眼立体視できるというのは画期的だ。3D表示は、これまで幾度となく話題にされたが、なかなか離陸できなかった。今度は本物かもしれないと思うが、問題は、映像ソースがないことだろう。3Dの放送とか、DVDとか、標準化されているのだろうか?ところが、自分で3D写真が撮れたり、ビデオも3Dで撮影できると成れば話は別である。自分で撮って、自分で見られる。
雑誌にも、Finepix REAL3D の広告が出ているが、立体視できる画像というのは、紙でもWebでも宣伝することはできない。それで、K'sデンキに実物を見に行った。Oh my god! これはすばらしい!ちゃんと3Dテレビのように、裸眼で立体視できる3D液晶ディスプレイが付いている。そして、実際に、かなり立体的に見える。画素数やズーム比、レンズの明るさなどカメラの基本性能は、たいしたことはないが、CCDもレンズ系も二系統組み込まれて、3万円程度というのは十分安いじゃないか。
このカメラは、2009年9月に発売されたFinepix REAL3D W1の後継機。立体画像を撮影できる機能は同じ。液晶ディスプレイの解像度が23万画素から115万画素へ、サイズが2.8インチから3.5インチへ大きくなったこと、それから動画が撮影できるのが最大の違いか。それから、4:3, 3:2に加えて、16:9 のワイド画像が追加された。パソコンよりも、3DのHD-TVで鑑賞せよ、ということなのでしょう。
カメラ本体は、230グラムあり、デジタルカメラとしては、明らかに大きく、重い。携帯性は良くないが、ポケットに入れて持ち運ぶことは可能である。
電池は、FP50というタイプで、Finepix F100fdと同じなので使い回せるのはありがたい。このごろのフジのデジカメは、FP45というより小型化された電池を使うことが多いが、一回り大きいFP50になっているということは、電池の消耗が大きいのだろう。
ダイヤルを回すと、autoの他に、プログラム(P)、絞り優先(A)、マニュアル(M)なども選ぶことができる。絞り優先と言っても、F3.7(4)-5.6-8 の3種類しかない。
ズームは、35-105mm相当の3倍である。24-28mmに慣れた目には、広角側がちょっともの足らないが、レンズ系を2系統備えなければならないので、コスト上無理はできまい。それに、広角にするとどうしても対象に寄りたくなるが、あんまり寄ると視差が大きくなりすぎて、立体視が成立しなくなる。マクロも8センチまで寄れるが、そんなに近くに寄ると、実は左右の画像には全く共通部分がなくなり、いかに視差調整しようが、立体視はあり得なくなる。
使い勝手は、あまりよろしくない。まず、電源スイッチは、前面のレンズカバーを下に下げることで行う。レンズが左右に二つあるので、このレンズカバーというのが、けっこう大きい。そして、いざカメラを構えて撮ろうとすると、二つあるレンズの前にどうしても指がかかりそうになる。Fujifilmさんもそれはわかっているようで、「指がかかってますよ」、という警告を出してくれる。二つのレンズ系を10センチ近く左右に離して配置するので、どうしてもカメラの左端と右端になり、そこは指が出てくるところなのだ。
いくつか問題はあるが、手軽に3D撮影・表示ができるというのは、欠点を補ってあまりある。それもこの値段!世界初!友達に自慢できること受け合います。(今のところ、あんた、新しい物好きやねぇ、とあきれられただけですが。。。)
M-A-Pというモードは、Sがないが、よくあるモードであるが、その他にREAL3Dには、advanced 2Dとadvanced 3Dというモードがある。
まず3Dの方から。これは、このカメラの最大の特徴である、二つの撮影系を使って2枚の左右画像を同時に取得するのではなく、一方の撮影系を時間差を置いて2回使うことで、立体画像を得ようとするモードである。なぜそんなことをするかと言うと、両眼視差のベースラインを自由に取りたい、多くの場合は、1メートルとか何十メートルとか離れた場所から遠くの風景を撮って立体感を誇張したいからである。たとえば、我々の目の間隔では、遠くから富士山を眺めても立体感は生じず、平板な風呂屋の壁絵のように見えるが、新幹線で高速で動きながら眺めていると立体感がわく。それと似たことができる。2枚の画像の取得は、マニュアルで2回レリーズしても良いし、2,5,10秒などの時間差を設定しておいて自動で撮ることができる。後者は、列車から遠景を撮ることを想定しているようだ。
もう一つのadvanced 2Dというのは、二つのレンズ系を立体視以外の目的に使うモードである。せっかく2系統あるのだから、露出の違う写真を同時に撮ったり、一方は広角、もう一方は望遠という使い方をしようというのだ。面白いアイデアだとは思うが、個人的にはあまり使うことはないように思う。このカメラは、あくまで立体写真が楽しいのであって、普通の2D写真を撮るには、画質の点からはあまり価値がない。
こういう変わったモードの他に、M-manual, A-aperture priority, P-program, S-shutter speed
priority とあるとき、何を選ぶかというと、絞りの選択肢が3種類しかないので、どれも同じです。そもそも、こんなコンデジで、絞りを開けて被写界深度を浅くしようと思っても、小さなCCD素子では期待するようなボケは得られません。通常の2D撮影では、このボケというのは、立体感を得る重要な情報源です。前ボケや後ろボケがあるから、撮りたい対象が引き立ち、ぼけた背景とは距離が異なることがわかるのです。ところが、Real3Dで撮る3D写真では、被写界深度は深い方が良い。背景がぼけたのでは、視差が出なくなり、距離がわからなくなります。デジ一眼は、コンデジと差別化するためもあって、大口径レンズを使ってボケが出るようにすることが多いので、3D写真には不適当と思われます。小さなコンデジこそが、3D写真に向いているというのはなかなか愉快です。
どうやってお見せしたらよいのでしょう。3D画像は、.MPOという拡張子の付いたファイルで作成される。普通のブラウザでは、jpegと同じように2D画像としてしか表示されないのだろうが、ダウンロードして3Dで見る方法があるのでしょうか。とにかくご覧ください。私自身、Finepix
REAL3Dでしか3D表示できません。白いバラと赤いバラがぐんと離れて見えます。
ビュワーとして使うとき、左右の画像の視差を調整するボタンが左上に付いています。立体感を強調したり、弱めたりするというよりは、対象をこちらに引きつけて見るか、向こう側に引っ込ませるか、という違いに思われます。
付属のソフトを使うと、既存のPCディスプレイでもAnaglyph表示によって立体表示してくれます。緑と赤のセロファンを右左の目に付けて観測するタイプです。まあ、それなりに見えますが、カメラの背面液晶の方がきれいでしょう。それに、白いバラは良いのですが、この赤いバラは、片方の目では全く見えなくなり、立体感が出ません。
ここに、同じFinepixの古いf100fd(上段)と、今回のREAL-3D(下段)の画像を並べて置きます。このサイズではよくわかりませんが、元のサイズの画像を見れば、明らかにf100fdの方が高画質です。隅の方で像がくずれますし、全体に粒子感が荒く、色もべたっとして不自然です。VGAサイズ程度ではわかるものでもなく、背面液晶で3D画像を楽しむ分には、全く問題ありません。
古い名機、Finepix-f100fd |
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DSCF1081.MPO へのリンク |
DSCF1082.MPO へのリンク |
Finepix REAL3D-W3 |
原画像を見ると、1000万画素というのは無駄なことに思われます。Mサイズ解像度(2592x1944,5Mピクセル)や、Sサイズ(2048x1536)を選べば良い?
とても楽しいカメラです。私は、1985年頃、3次元のコンピュータグラフィクスの研究をしていました。当時は、もちろん、裸眼での立体視は不可能で、左右の画像を分離するためにシャッター付きの眼鏡を付けて、ぱたぱたと切り替わる画像を見ていました。確かに立体感は出ますが、のっぺりした、グラフィクスでは、感激するようなきれいな絵にはなりませんでした。それを思うと、このカメラは、私には、もう、涙が出るような技術の進歩を感じます。3D写真が、大ブレークして欲しいと切に願います。
カメラは楽しいのですが、3D画像を鑑賞する方法が、我が家では、このカメラの背面液晶しかありません。3Dテレビを買わないといけない。ところが、うちは、プロジェクタなんです。裸眼で使える3Dプロジェクタってのは、ないと思います。やっぱり液晶テレビを買うのでしょうか。パソコンディスプレイで、3D表示ができるものがあります。たとえば、Diamondocrysta WIDE http://www.mitsubishielectric.co.jp/home/display/product/multi/rdt233wx_3d/ などで、5万円以下で売られています。いわゆる3Dテレビってのは32インチ以上のようですが、こいつは23インチとコンパクトです。しかし、PCの画面ってのは、いまだに2Dですから、いったいどうやって3D表示をするのでしょうか?グラフィクスボードとかは変えなくて良いのでしょうか。などと考えていたら、家人からは、「sylvania family人形人生の始まりね、人形買ったらお洋服買って、次におうちを買って、友達も買ってって、どんどん増えてくの。」という非難を浴びました。そうだ、それが日本の生きる道なんだよ!
3D写真が撮れて、それを見ていると、3Dが当たり前に思えてきます。このカメラには、液晶表示を2Dと3Dで切り替える機能があります。それで3D写真を2Dで見ると、当然ながら平板で奥行きがありません。今までの写真は全部これだったのか、今でもほとんどの写真は2Dでしかないと思うと残念であり、いずれは皆が気がついて、猛然と3D写真を撮り直すようになるのではないかと思います。一度3D写真に慣れてしまうと2Dに戻れないというのは、HDTVを見るとNTSCに戻れないのと似ています。