ミラーレスデジ一眼、Sony-α55


2011-5-10

α-330に何か問題でも?

1年半前に入手したα330は、よく活躍した。別に問題があるわけじゃない。より高解像度(1600万画素)、高感度(ISO12800) になったCMOSセンサーや、HDRやスイングパノラマ、手持ち夜景、GPSなどの楽しそうな新機能、毎秒10コマのハイスピード連写、いっそうの小型化、フルハイビジョン動画など、1年で驚くべき進歩があったので、購入を決めた。息子が海外旅行に持って行きたいというので、α330を貸し出し、その間にα55を購入。帰国した息子は、「α330を落として壊した(ライブビューが出ない)」と言う。ほーらやっぱり、もう一台必要じゃん。

α55の新機能

高速連写が可能にする新世界

センサーがCCDからCMOS1600万画素と高画素化。1画素は、5μmほどであり、そこまでレンズが解像するのかという疑問も湧く。

感度は、裏面照射型のCMOSにより、光の導入面積が増えて、向上した。ISO-12800までセットできるが、普通に使えるのは800まで。α330に比べて、1EV分くらいは感度がよくなったか。雑誌の情報では、確かに裏面照射型は、配線部分の影が減って光の入力量が増えるが、センサーの大きな一眼タイプでは、そもそも配線の占める割合はそれほど大きくはなく、1億画素くらいにならないと差がわからないだろうという。小さなセンサーを使うコンパクトデジカメの方が効果が大きい。

完全なミラーレスではないが、シャッターのリリース時にミラーの跳ね上げがなくなり、ハーフミラーを透過した光を写し込む。ミラーの動作がないから、シャッターのショックや音が小さくなった。そして高速動作が可能になった。

さて、α55の最大の特徴は、上記の感度向上、機械的動作向上に加えて、画像処理の速度を速くしたことで、高速連写が可能になったことだろう。秒10枚というのは、高級機以上の最高速である。しかし、この高速連写すら、次の機能の要素でしかない。

高速連写は、スポーツなど一瞬のチャンスを待ち構えているときは重要だが、風景写真には効果が少ない。しかし、ソニーは、風景のような静的な写真にも高速連写が役に立つことを主張している。露光量ブラケット、ホワイトバランスブラケットなどが短時間で決まる、ということではない。HDR、パノラマと、手持ち夜景撮影である。今のところ、プロのカメラマンが、HDRやパノラマを多用するとは考えにくい。その証拠に、これらの新機能はrawモードでは使えず、jpegに記録しなければならない(プロは、jpegなど使わないだろうという推測)。手持ち夜景にしても、プロは、がっしり三脚を据えて撮影するだろう。だから、これらの機能は、物好きのアマチュアや、一風変わった撮影を楽しみたいマニア向きの限定機能であろう。しかし、逆光や夜景という、普通なら撮影を諦めてしまう場面や、魚眼レンズがあったらなーという場面で手軽に超広角撮影ができるのは、ありがたい。デジタルで画像処理ができるという、フィルムにはない機能を強調するのに、ソニーの技術者が知恵を絞ったのだろうと推測する。HDR、パノラマ、手持ち夜景を次世代デジカメのキラーアプリと考え、それに必要な高速連写、それに必要なミラーレス、高感度センサーの開発に努力したのだろう。

今は、次の新しい3D撮影を構想しているのだろう。世の中を3D漬けにして、売りたいのは、3Dディスプレイの方だろう。しかし、3Dの映像ソースはなかなか手に入らない。何しろ放送波では両眼視差画像を送ることができない。家庭で映像ソースを作って楽しんでもらうのが手っ取り早い。しかし、静止画像をTVに写して楽しむだろうか?TVに写すのは、動画である。だから、α55も、HD解像度の動画を実現した。静止画の解像度競争が終わったので、次は3D動画が主戦場になっていくのだろう。二つのレンズを備えたデジカメが出現するかもしれない。

Electronic View Finder

ミラーレスなので、ファインダーは、自然光をそのまま観察するのではなく、Electronic View Finderになっている。個人的にはファインダーはほとんど使わない(めがねをしているので、ファインダはのぞきにくい)ので、気にならないが、液晶の粒子が見えたり、色が違って見えるのをぼやく人はいるだろう。しかし、液晶ディスプレイと同じように、手ぶれ警告や水平義が表示できたり、ピントを拡大して合わせられるのは大変ありがたい。色が違って見えるというのも、ホワイトバランスの確認に使えるわけで、特に欠点ではない。それどころか、暗視カメラとして使えるという意見もある。暗い夜景でも、ファインダの中はかなり明るい。下の写真は、別のカメラ(A330)でファインダをのぞいて撮ったところ。こんな撮り方でもデジカメのオートフォーカスは有効。水平水準器が表示されている。

パノラマ

ダイヤルでパノラマモードを選び、レリースしてカメラを左右か上下に180度回転させると、何枚もの画像を連続して撮影し、しばしの画像処理時間の後、12416 × 1856の巨大なパノラマ画像ができあがります。高速で連写するので、ゆっくり動いている観客などは、特に問題なくつながります。しかし、それでも、故意に手ぶれを起こしながら撮影しているようなものですので、被写体には残像が出ます。連写中はそれなりの音が出ます。周囲の人は、何事かと振り返ったり、「ずいぶん、何枚も撮るのねぇ」と不思議がったりします。(下の作例は、クリックするとオリジナルサイズに拡大されます)

 

D-rangeオプティマイザとHDR

リリースボタンのすぐ隣に、D-rangeボタンがあり、ダイナミックレンジ・オプティマイザーの効きを変えたり、HDR (high dynamic range) 撮影を選べる。HDRは、露出を変えて3枚を撮影して合成するのだが、EVを1から5までの幅(最大5絞り分)で変えられる。D-range オプティマイザやHDRは、コントラストを減少させるので、眠たい画像になるが、白トビ、黒トビの発生を抑えられる。HDRを強く効かせると、肉眼では暗すぎて、あるいは明るすぎて見えない部分が浮かび上がり、不思議な写真ができあがる。

動画

コンデジでは当たり前の動画撮影が可能になった。それもHDV画質である。普通のビデオカメラよりセンサーが大きく、明るいレンズを使えるので、ぼけが強く出せ、立体感のある動画が作れる。手ぶれ補正を効かせていると、発熱が大きく、電池もすぐに減るので、数分で撮影が強制終了になるらしい。それでも、動画が撮れるのはありがたい。下の作例は、640x480のmpeg4に変換してあります。

GPS

撮影場所の緯度経度がEXIFに記録される。picasaやpanoramioにuploadするときは簡単、正確で良い。撮影場所に撮影時刻も記録されるのだから、自分の行動が記録されているようなもの。電源を入れて1-2分は、場所を特定できず、以前の場所が記録されるので注意が必要。また、GPSはけっこう電力を使い、電池のもちを悪くしているらしい。

背面液晶

液晶ディスプレイは92万画素になり、1024x768のXGA以上の解像度でモニターできる。A330のような上下だけでなく、左右にも傾けて表示できるので、ウェストレベル、オーバヘッド、横向き撮影、自分撮りなど、自由自在。ディスプレイ面を内側に格納して、表面を保護することも可能。下の図は、Fnボタンを押してファンクションを表示させたところ。

ペリクルミラー方式

 

A55のレンズマウントから内部をのぞいたマクロ写真です。いわゆるミラー部に白いほこりが載っています。そこに焦点を合わせたつもりです。緑色に見えるのは、撮像素子のEXMOR-CMOSセンサーです。中が見えると言うことは、ほこりがついた部分は、ミラーではないということです (しかし、埃を付けたのはまずかったですね)。

 

A55の特徴の原点は、一眼レフと言い切れないところにある。レフに相当する鏡が、pellicle mirroとも呼ばれるハーフミラーで、常時両方向に光を透過し、シャッターレリーズ時に跳ね上がらない。30%の光は、ファインダー側に誘導されるので、CMOS撮像センサーに届く光は減少するが、センサーの感度が上がったので良しとする。一方、ミラーがばたばたすることがないので、振動が減るし(実際のレリーズ時にはかなりの音がする)、高速シャッターが可能になる。また、動画撮影中もオートフォーカスや測光を継続できる。

この方式のもう一つの利点は、撮像中でもファインダ像が消失しないことのはずだ。しかし、実際のA55は、露光中は像が消失する。高速連写、ブラケットの3連写でも像は消失する。ファインダに出てくる絵は、一瞬前に撮影した再生画像だったりする。しかし、不思議なことに、パノラマ撮影中は、ずっと絵が出続ける。パノラマするときは、像が見えていないと、カメラを振り回すことができないから、当然の仕様ではあるが、それなら連写中や長時間露光中もファイダや背面液晶にリアルタイム像を出せるのではないだろうか。

さらに言えば、撮像用のセンサーの前には、focal plane shutterがあるわけではなく(だよね?)、センサー面は常に露出している。EVFならば、ミラーレスであってもファインダ像は表示できる。このセンサーを使えば、AF用の別のセンサーは不要に思われる。なぜ、完全ミラーレスにし得ないのだろうか。このAFセンサーというのもCCDセンサーだと思われるが、別に設ける理由として、本体センサーとの解像度の違い、よって読み出し速度や処理速度の違いがあるのかもしれない。しかし、AFセンサーは、本体センサーよりも低解像であるというならば、本体センサーの解像力に適合したフォーカスが得られていないということである。AFセンサーが、合焦したと判断しても、より高解像度の本体センサーでは誤差が出ていることがあり得る。A330では、本撮影用のセンサとは別に、低解像度のセンサで作った画像をライブビューに表示している。だから、色合いが違ったりノイズが多いだけでなく、ピントがはっきりしない。

ところで、ペリクルミラー方式の一眼レフとしては、1989年発売のキャノンのEOS-RTがある。さらにその24年前、1965年発売のキャノンPellixも、その名の通り、ペリクルミラー方式である。ペリクルミラーに効用を見いだしていたのは、ソニーではなく、キャノンだったのだ。しかも、これらのキャノンの機種は、当然動画撮影などはできないが、レリーズ中もファインダ像が消失しないことが最大の特徴であった。ソニーが、その御利益を捨ててしまったのが残念だ。

その他のA330からの改良点

ライブビューの解像度が上がり、ピントを見るのが簡単。特に、拡大表示をすると、マニュアルフォーカスがとても簡単かつ高信頼になる。A330では、jpegモードでしか拡大表示が行えず、rawモードでは使えないという理不尽だったが、A55は、もちろんrawモードでも拡大表示が可能である。A55を使ってしまうと、A330のライブビューの画質の悪さには、とても耐えられない。

AEL (AE Lock)ボタンが付いている。AF (Automatic Focus) ボタンも付いている。両者を独立してロックできる。A330では、リリースボタンの半押しで、両方をロックするしかなかった。ま、それはそれで簡単で便利だったけど。

絞り込みボタンが付いた。焦点深度を確かめるのが簡単になった。フィルムカメラ時代にも絞り込み測光ボタンがあり、たまに使ったが、実際は、絞り込むと暗くなって見え方ががらりと変わった。ところが、A55は、EVFなので、電気信号を増幅すれば、ノイズは増えるだろうが、絞り込んでもほとんど暗くならない。これもミラーレスのいいところ。

内蔵フラッシュを立ち上げるボタンが付いた。フラッシュを起こせば必ず光るし、畳めば光らない。大変わかりやすいインタフェースになった。コンデジにあるような、フラッシュありとなしの両方を同時に撮影するモードもあるとよいが。

α55のちょっとした問題

メモリカードは、SDとメモリスティックが使えるのだが、どちらか一方しか入らない。α330は、どちらも入れられるので、両方の容量まで使えた。 メモリカードの容量は32GBとかべらぼうに大きくなったので、容量を増やすことには意味はないが、一方を取り出してPCに差し込んだまま 撮影に出かけることがあり、もう一方のメモリカードが使えるとフェイルセイフになる。

バリアングル液晶は、上下だけでなく、左右にも向けられるようになった。 私の場合、ウェストレベルにカメラを構えたいことがよくあり、そういうときはα330のパンタグラフ式 の方がありがたい。上向きでも下向きでも、好きな方向にすぐ向けられる。 α55は、いったん液晶を下に向けた後、パネルをぐるっと180度反対に向けないと ウェストレベルで使えない。ちょっと不便ですね。

電池が、A330の容量は同レベルなのに、違うタイプ。1個は付属してくるが、あまり持ちは良くないので、追加調達が必須。NEXと同じ電池らしいが、A330シリーズの電池も使えないものか。カメラ本体はお値打ち感があるが、こういう付属品でがっぽりとられるのは気分良くないね。

Penguinの作例は、Picasa, Flickrでご覧ください



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