太陽光発電か、米作か?

Penguin!!

2016-3-20
2018年8月改訂
   日本の太陽光発電所マップ
http://agora.ex.nii.ac.jp/earthquake/201103-eastjapan/energy/electrical-japan/type/8.html.ja
火力、水力、風力など、すべての(産業用)発電所の一覧表とマップがある。
2018年8月時点では、6894件、18,127MW、すなわち1,813万kWの太陽光発電所がある。最大規模は、青森県にある15万kW。屋根の上の家庭の発電パネルも加えれば、太陽光発電の総容量は、2,000万kWを越えるでしょう。原子力発電所20基分です。お昼、それも天気の良いお昼だけですが。
   つくば市の北部にある発電所。中央部上にある、ちょっと大きめの発電所。
  SJソーラーつくば発電所というそうです。3万5000kWで、国内で38番目、おそらく茨城では最大規模。
右下に見える丸い施設は、高エネ研の加速器リングです。

ところがこのSJソーラーというのが、怪しい。
 
  2017年3月18日
こちらは、土浦に近い太陽光発電所。 5,000kW
  Lixil つくばソーラーパワー 5600kW
   

太陽光発電の導入

東日本大震災で東電がだいちょんぼをやらかし、福島第1原発が崩壊して、日本中、いや世界中で原発を忌避する動きが活発になりました。しかし、エネルギー、電気は必要なので、クリーンで安全な再生可能エネルギーに目が向かいます。電力会社による分散電力の固定価格買い取りを定めたFIT (feed-in tariff)が始まり、2014年の夏頃には、太陽光等の電力が過剰に流れ込んで、基幹系が不安定になるとして、新規の契約を止めたいという動きまで出ました。九州電力などは、もともとがそれほど大きな電力ではないところに、好立地を生かして大量の太陽光発電所が建設され、総電力の半分を超える契約に迫ったようです。買い取り価格がこの先は下がっていくことを見越して、早めに契約をしておこうという動きがあったようですが、それまでなかなか太陽光の導入が進まなかったのに、FITで一気に進んだのは驚きでした。43円/kWhという無謀な高価格になったのは、太陽光発電事業に乗り出そうというソフトバンクの孫社長の意見が強く作用したと言われます。

つくば市の太陽光発電施設

つくば市の特に北部をサイクリングしていると、しばしば大きな太陽光発電施設に出くわします。上に上げた写真のSJソーラーは3.5万kW、Lixilの施設は、5000kWほどのようです。。

つくば市には、22万人が住み、一戸建ての家が37,000軒ほどあります。もし、その10%が5kWの太陽光発電を付けているとすると、3700*5kW=1.85万kWが発電されます。このほかにも多くの太陽光発電施設があります。したがって、おそらく、つくば市全体の太陽光発電を合計すると、10万kWほどにもなるでしょう。22万人の人口が、一人あたり1kWの電気を使うとすると、その消費量の約50%を太陽光発電でまかなえることになります。もっとも、太陽光発電の定格は、太陽が直射しているときの性能で、せいぜい一日に10時間しか発電出来ません。後述するように、実績は12%になります。

日本の太陽光発電導入状況

こちらに2013年までの導入状況がまとめられている。2012年6月末までで2000万kWであったところ、その後の1年ほどで900万kWhほどが加わったことになっている。日本の総発電量は、確か1億kWhほどだから、すでに20%に達していることになるが、それは日本中で天気の良い昼間のことだけだ。2016年11月の資料では、3,315万kWhとなっている。統計では、毎月50万kW程度ずつ増設されているので、1年で600万kWh、10年たてば、ほぼ100%の昼間電力が太陽光という計算になる。しかし、買取単価が下がって、国内企業の投資は鈍ってきているようだ。

米作りと太陽光、どっちがもうかるか?

これらの太陽光発電施設は、以前は水田か畑でした。Google Earthで見ると、太陽光発電施設がたくさんありますが、そこをストリートビューで近寄ってみると、ストリートビューは昔の画像が残っているので、水田や畑だったことがわかります。

水田だったとしましょう。10a、すなわち1000㎡の水田からは、平均して531kgの米が作られます。 米の価格というのは、玄米60kgあたり1.3-1.5万円くらいのようです。中を取って1.4万円とすると、10aの水田の売り上げは12.4万円ということになります。これは売り上げですから、これに肥料、農薬、農機の使用量や工賃がかかります。いくらかわかりませんが、10万円以上の収入を得ることは難しいでしょう。

同じ水田を太陽光発電に転用したらどうなるでしょうか。太陽光パネルというのは、1㎡あたり、200Wくらいの発電量です。夜間や悪天候を考えると、この12%の能力になります。年間8760時間をかけると、年間に210kWhになります。1000㎡では、21万KWhです。これをkWhあたり30円だと630万円、20円だと420万円ということになります。

これは、上記の米作りの実に42倍の収益です。太陽光はだんだん効率が落ちたりするので、この半分だとして、とても米作りが適う相手ではなさそうです。それに、一度設置したら、保守は必要ですが、米のように草を取ったり、水を見たり、苗代をつくったり、農薬を撒いたり、肥料を撒いたり、コンバインを動かしたりという手間はかからないのです。ほっておけばどんどん収入になる。もちろん、初期費用がかかります。1000㎡の太陽光パネルは、2500万円ほどしますし、その制御系や架台に1000万円くらいはかかるでしょう。その償却に10年近くかかると思われますが、その後は、高収益です。仮に寿命が20年だとしても、米作りの20倍の収益は確保出来ます。

農地を発電所に転用しようとする人の最大の心配は、買い取り価格でしょう。10年後の買い取り価格は、kWhあたり10円以下に下がっている可能性があります。それは、このような高収益だから、我先にと参入が相次ぎ、競争が激化して、買い手市場になるのです。10年先は、電気は節約せずにどんどん使えと言うことになっているかもしれません。そういうふうだから、10kW以上の太陽光発電の買い取り価格は、10年ではなく、20年間据え置きとなっているようです。ただ、事業でやると単価が下がるようですが。

もう一つの心配は、米作りが廃れてしまうことです。濡れ手に粟の発電商売と、額に汗して低収益の米作り、農業と、若者はどちらを選ぶでしょうか。米の価格が10倍になれば、バランスするかも知れません。しかしそれでは日本の農業の国際競争力はさらに下がります。しかし、農業に代わって太陽光発電を導入する動きは、日本だけでなく、世界的に進行するでしょう。石油の価格も暴落するかも知れません。農業に適さない砂漠のような土地は、太陽光発電に最適です。送電施設が大変ですが。太陽光での電気が余れば、それを電池に蓄えもするでしょうが、水を電気分解して水素にして蓄える方法もあります。その水素も余ってくるでしょうから、減っていくガソリンの代わりに水素自動車が増えていくかも知れません。太陽光の普及は、産業や社会に大きな変革をもたらしそうです。

上で紹介した、つくば市最大の太陽光発電所、SJソーラーというのは、中国資本、上海電力の日本法人のようです。こちらの記事を見ると、とんでもなく怪しい。シェアリングといって、農業と発電と両方やるからと許可を得て土地を安価で取得し(おそらく農地価格)、登録が早かったのでkWあたり38円という高額で収益が上がるようになっています。ところが、私が見た限り、ここでは、全く農業は行われていません。単なるソーラー発電所です。記事を読むと、ソーラー発電というのも仮の姿に過ぎず、中国の実際の目的は、日本の土地を手に入れることだという推測もあるようです。つくば市の農地が、太陽光発電所に変わっていくのはしかたないとしても、こういうふとどきなやり方で踏みにじられるのは不愉快な思いです。中国側では、こんな記事も出ています。


Penguin!!のトップに戻る 必要ならFacebookでmatsui toshihiroを探してください。