ちょっとその前に、「ランニングで減量」、「ダイエットで減量」、は正しいですが、 ダイエットは食事療法のことですから、「ランニングでダイエット」と言うのは間違いですね。
私の経験では、走って減量するのは至難の技。 だけれども、走らないと太ってしまいます。
勤務先(の一つ)は、ビルの10階にあるので、しばしば階段を歩いて登ります。
体重+荷物で80キロ、高さ35メートルとすると、 必要なエネルギーは、80kg*35m*9.8m/s2
/ 1000 / 4.2 = 6.53kcal になります。筋肉やヒトの循環器系の効率がオーバオールで30%くらいとすると、
20kcalくらいの消費になるでしょう。 脂肪は1グラムで9kcalですが、脂肪細胞には水分等も付随するので1グラム5kcal位で計算すると良いのだそうです。そうすると、ビルの10階まで駆け上がることで、4グラムほど減量できることになります。
階段上りはポテンシャルエネルギーで仕事量を計算できますが、
ランニングは平地を走っているので、全くエネルギー消費がないことになります。
別の方法で見積もってみましょう。
そもそも、運動すると体重が減るのはなぜか?
汗をかくからでしょうか?便通がよくなるのでしょうか?
いいえ、 吸った酸素に炭素と水素を付けて吐き出すからです。
皮膚から滲み出す汗で痩せているとしたら,どんどん乾いて脱水症になってしまいます。
かいた汗は水を飲んで補わなければなりません。
酸素はO2ですが、二酸化炭素はCO2 。このCがつく分、体重が減るのです。 運動すると口からやせる、あるいは肺で痩せるというのが正しい。
私の場合、ランニングの中盤では、一分間に42回呼吸をしています。
一回の呼吸で2.5リットルの空気を吸う/吐くとしましょう
(ちなみに、私の肺活量は5リットル以上あります)。
空気中(吸気)の酸素の比率は20.94%、二酸化炭素は0.03%、
呼気中の酸素は16.4%、二酸化炭素は4%、と言われます。
走っているときはこれと異っているかも知れませんが、4%の酸素が二酸化炭素に
変化することにしましょう。ちなみに、吸気の20.94+0.03 というのが、呼気の
16.4+4 より多いのは、呼気には水蒸気が増えるからです。
二酸化炭素が4%になると仮定すると、
毎分吐き出す二酸化炭素の量は、以下のように
4.2リットルです。これは、0.1875mol に相当します。
42回/分 * 2.5リットル/回 * 0.04 = 4.2リットル/分
0.1875mol
の炭素は、2.25グラム、炭素の他に水素や酸素も出すでしょうから、
えいやっと、2.5グラムということにしましょう。
1分走ると2.5グラムの減量、ということです。
10階までの階段上りは、2分くらい
(最高記録は1分25秒くらい)かかりますので、
1分で2.5グラムですから、ランニングと同じくらいということになります(当り前)。
何でもいいから息をハアハアさせる運動を一生懸命やると一分で2-3グラム減量、
というのは覚えておくと良いかも知れません。
もちろん、体重など個人差はあります。
それから、数分以内の運動では、血糖など糖分が燃えるだけで脂肪は動き出さないので、
15分くらいは続けないと効果が無いと言うことも聞いたことがあります。
成人が安静にしているときの呼吸数は、毎分15回くらい、一回の呼吸で交換される空気量は500cc
くらいです。 先に述べたように、呼吸で二酸化炭素に置換される酸素は4%くらいですか
ら、一分間には、15×0.5×0.04=0.3リットルです。これは、0.0134molに 相当します。1日ではその24×60倍で、19.3molの酸素が消費されます。
酸素分子ひとつにくっついて出てくるのは 炭素原子1個(ホントは水素の分を差し引かないといけないのだけれど)とすると、
その質量は、19.3×12≒ 240グラム。 これらが糖分起源だと1000キロカロリーくらい、
全部が脂肪起源だと2160キロカロリーということになります。 その中間で1600キロカロリーというのはリーズナブルに思えます。
いずれを起源にせよ、一日水を飲んで寝ているだけで、 240グラムの体重がnetで減少します。
240グラムも炭素や水素を食べていないって?そんなことはありません。日本人が一日に摂取する食品は、タンパク質が約80グラム、炭水化物が270グラム、脂質が60グラム、合計410グラムです。そのなかには、酸素や窒素も多少ありますが、ほとんど炭素と水素ですから、毎日基礎代謝で240グラム、そのほかの有益な?運動や脳の活動に170グラムの炭素と水素を燃やしているというのは結構正しそうです。この食品割合からは、タンパクの半分が燃料に使われるとして、糖質300グラム対脂質60グラム、すなわち240グラムの燃料のうち5/6が糖質起源、1/6が脂質起源とすると、カロリーは1160になります。基礎代謝1600にはちょっと足りませんね。糖質が脂質に代わって貯蔵されているからほとんどを脂質起源として計算すべきなのでしょうか。
ちなみに、この食品データは、1998年の厚生省、国民栄養の現状からとっています。そこでは、1996年の日本人一人あたりの熱量摂取は、2002キロカロリーになっています。ところが同じ1998年の農水省発表の食料需給表では、総エネルギーは2651キロカロリーになっています。この差は何でしょう?資料の名前から推測すると、食料として口に入ったエネルギーが2651キロカロリー、そのうち身体に取り込まれたのが2002キロカロリーということのようです。肥料にも相当にカロリーが残っていることがわかります。
水飲みダイエットいうのがあるそうです。家内も知っていました。水をたくさん飲むと、おなかが張ってたくさん食べられなくなるのかな、と思いましたが、それ以外に理屈があるようです。
飲み水には不純物はありませんが、身体から尿や汗として排出するときは、必ず塩分が混じります。純水では排出できません。塩分がどのくらいなのか?血液と同じくらいだとすると、0.6%くらいの濃度です。腎臓は、0.6%より濃い尿を作るために、再吸収などのメカニズムを持っていることを高校の生物で習いましたが、これより薄い尿を作れるのかどうかは知りません。1リットルの水を飲むと、6グラムくらいの塩分が失われるはずです。どんどん水を飲むと、どんどん塩分が失われる。そうすれば、塩分濃度を一定に保つために、その10倍以上の水を減らさないといけないので身体が縮む、という理屈のようです。
それで、ここ数日、一日に3リットルくらいの水を飲んでみました。間食が減ったように思いますが、体重は変わりません。それより、水を飲むと、体温が下がることの方が重大なのではないかと思えます。冷たい水を飲むと、やっぱり身体が冷える。ビールのように5度くらいの水だと、これを体温に暖めて排出するのだから、約30度の温度差があり、1リットルの水では、なんと30Kcalになります。3リットル飲めば、100カロリー近い負荷になっています。お風呂に入ったらご破算ですけど。
こんなややこしく考えなくてもよいのです。体重1キロあたり、1キロメートル走ると1カロリー、というrule
of thumbがあるようです。体重70キロの人が3キロ走れば210カロリー。1キロを5分で走ると、1分あたり14カロリーで、これは、上で計算した1分あたり2−3グラムの減量というのとほとんど同じ。
速さはどうなのか?それが、速ければ時間が短くなり、遅ければ時間がかかる。スピードあたりのカロリー消費はだいたい直線的に伸びるので、補正はいらない。速く走っても、ゆっくり走っても、1カロリー。速さに関係ない。これは簡単。
しかし、さすがに歩く場合は、半分くらいになる。歩くというのは、走るのより倍くらい効率が良いのです。ただし、それは時速6.5−8.5キロくらいまでのことで、そのあたりで歩きの効率は急速に悪化し、走る方が効率が良くなる。だから、競歩の選手は、時速15キロくらいで歩きますが、同じ速さで走る方がずっと楽なのです。
冒頭の階段上り、正味の仕事率は、307W になります。階段上りは、心肺機能の大きな負担がありますが、主役は足腰の筋肉で、腕や肩の筋肉はたいした仕事をしていません。その点、自転車は総合力です。
自転車で平地を走るときは、自転車と地面の摩擦、風の抵抗、自転車内部での摩擦が仕事の内容です。山を登るときは、これにポテンシャルエネルギーの獲得が加わります。それに山登りはスピードが遅いので、摩擦や空気抵抗が少なく、純粋ポテンシャルエネルギーで計算してもそんなに誤差は出ないかもしれない。不動峠上りで計算してみましょう。
不動峠は、標高300メートル、運び上げる質量は85Kg、所要時間は19分としましょう。仕事率は220Wです。うーっむ、時間が違うからだろうか。