静かなホームサーバー 

(その4: ハードディスク交換)

2003-8-31 10月にちょっと改訂

ハードディスクが死んだ?

2003年の夏は記録的な冷夏でしのぎやすかったのですが、35度くらいにまで気温が上がった日も何日かあります。そんな週末のある日、サーバーが 急に不調になってしまいました。ハードディスクからI/Oエラーが出ています。時間をおいて何回か再起動しましたが、ディスクが認識されません。(しまっ たー、バックアップしてから一月もたっている。)かちゃこーん、かちゃこーん、というディスクのアームが動く音が周期的に続いています。えー、ままよ、と ハードディスクに振動を与えてみました。すると何事もなかったように直ってしまいました。

2.5インチディスクをサーバーに使ってよいものか?

2.5インチディスクはもともとノートPC用で、サーバーのような連続使用を想定していません。アクセス速度は求めない代わりに、消費電力を減らし、持ち運びによる振動に安全なことを指向しています。モバイル使用でディスクが故障しないように、ヘッドアームはいちいちホームポジションに復帰するように制御されているそうです。サーバー用では、一つのアクセスが終わるとその場にヘッドはとどまります。2.5インチでは、ヘッドの動きが多くなるので、アクセス時間もかかりますし、寿命も短くなります。データシートで見ると、3.5インチが 50,000時間くらいのMTBFなのに、2.5インチは20,000時間くらい、寿命も2年となっています。

それから、ディスクのシーク音も気になります。カリカリ音が休みなく、 深夜もずっと続くので、またもや妻は別室で寝ると言い出しました。

3.5インチに交換

寿命を暗示する不穏な挙動とシーク音の高まり、それに容量不足を解決すべく、またもや3.5インチディスクに換装することにしました。システムの載せかえって、いろいろなサービスの設定をやりなおさなければならないのでとても面倒なんですけどね。。。

我が家にある最新のハードディスクは、2002年の8月に購入したIBMの120GBディスクですが、すでに報告しましたように、サーバーで3ヶ月ほど使い続けただけでスピンドル軸 から異音を発するようになってしまいました。ボールベアリングでは不十分で、是非とも流体軸受けにしたいところですが、もはや、IBMを使う気にはなれません。今使っている2.5インチのディスクは、IBMの流体軸受けのTravelstar IC25T048ATAです。回転音は静かですが、シーク音はかなり響きます。Windowsに使っているSeagateの80GBディスクは、回転音、シーク音共に、とても静かです。

ディスクはどんどん大容量化して、最近は300GBというのがトップ容量です。大きい方がよいに決まっていますが、なぜか、最新のマクスタ、Maxtor 5A300J0に関してはデータシートが出ていなくて性能諸元がわかりません。そこまでの大容量も当面は必要ないので、160GBのディスクを探すことに しました。Maxtorの4R160L0と、SeagateのST3160021A (または23A) を候補にしました。気になるデータをデータシートから集め、現状のTravelstarと比較したのが下表です。


rpm
buffer
access
Power (idle)
Acoustic(idle-seek)dB
price
IBM Travelstar IC25T048(2.5)
5400
2MB
12ms
2.0W
25-35

Maxtor 4R160L0
5400
2MB
12.6ms
5.6W
24-36
15000?
Seagate ST3160021A
7200
2MB
8.5ms
7.5W
25-25-31
14,880

ネットワーク越しに使うサーバーなので、アクセス速度は気にしません。問題は、低電力消費を取るか、静音をとるか、にあるようです。ここでは、静音化によ る夫婦円満を優先して、Seagateにしました。2Wの違いは無視できません。電気料金は、月に40円ほどの違いですが、冬になってもファンを止められなくなる心配もあります。また、Idle時は、SeagateよりMaxtorの方が静かです。しかし、ここ数ヶ月、一番困ったのは、ハードディスクのシーク音です。Seagateの言うQuiet seek(25dB)とPerformance seek(31dB)の違いはよくわかりませんが、少なくとも手元にあるBarracuda-4 80GBのディスクのシーク音はとても静かです。Maxtorのような、idle時とseek時の音量に12dBもの差があると、おそらくよけいシーク音 がうるさく感じるだろうと予測しました。

シーク音も回転音もとても静か

ST3160021Aは、パソコン工房で14,880円でした。ST3160023Aというバッファが8MBある機種が1000円高でありますが、あいに くと品切れなのと、今回はアクセス性能は求めないので無視しました。バッファの効果が出るのは、ディスクの物理的書き込み速度に比してATAインタフェー スが速すぎる場合、それも書き込みの場合です。読み出しに対しては、コンピュータ(Linux)側が大量のバッファを持っていますから、2MB-8MB程 度のバッファをディスクが用意したところでたいした意味はないだろうというのが私の理解です。

さて、新しいディスクを取り付けてLinuxを入れた後、早速やったのはhdparm -t です。(速度は気にしないなどと言っておきながら!)結果は、23MB/sで、2.5インチの2倍以上の速度になりました。体感レスポンスも速くなったよ うです。もっと高速のCPUというかバス・メモリを使えば、この倍くらい行くでしょう。問題の騒音ですが、回転音は、回っているのかよくわからないくらい静かですし、シーク音もほとんど聞こえません。ファンの音にかき消されているだけですが、2.5インチのようなカリカリ音は全くしません。 ヘッドの動きそのものが減ったようです。一方、発熱は相当に増えました。機材をばらしてシステムをインストールしている間に50度くらいまでは上昇しまし た。ケースに入れると、ケースの金属に放熱されますし、ファンの風が流れることで簡単に冷却されます。せいぜい45度くらいだろうと推測します。

電流測定

クランプメータで計ると、ディスクが消費している電力は、アイドル時に6Wくらいです。ちなみに、CPU.ファンは1Wくらいです。

雑感

3.5インチのディスクは、1997年頃に初めて7200rpmが出て以来、今ではほとんどが7200rpmになってしまいました。ところが、静音マ シンを作る上では、7200より5400が有利ですし、EPIAで営業するwebサーバーには5400の性能で十分。もっと静音と低消費電力にこだわった ディスクが出てくることを期待したいものです。

サーバーには高信頼が必要ですが、家庭への浸透(そんなものあるか?)や環境への配慮を考えると、小型化、高効率化も重要です。その点、2.5インチディ スクをサーバーに使うというのはなかなかよいアイデアだと思うのですが、信頼性が低く、制御がモバイル一点張り、そして何よりシーク音が高いという欠点が あります。ハードディスクは、HDDビデオレコーダーとして家庭に入るようにもなっています。そこでも3.5インチより2.5インチ、あるいは1.8イン チが圧倒的に有利だと思うのですがいかがでしょう?

しかし、ディスクで節約できる電力は、上の表のように、たかだか5ワットくらいのものです。最近のCPUが50W以上を消費するのと比べるとたいした違いではありません。CPUが数ワットになると、それに引きずられて周辺機器の省エネルギー化も進むのでしょう。


toshihiro@matsui.dip.jp